外国人向け日本生活ルールブック

技術・人文知識・国際業務ビザにおける技術職の職務要件とキャリア変更・更新の注意点

Tags: 在留資格, 技術・人文知識・国際業務, 転職, キャリアアップ, 就労ビザ, 職務要件

はじめに

日本で技術者として活躍されている多くの外国人の方々が取得されている在留資格の一つに、「技術・人文知識・国際業務」があります。この在留資格は、特定の専門分野における知識や技術を活かして働くことを目的としており、多くの場合、大卒以上の学歴や一定の実務経験が要件とされます。

日本での生活や業務に慣れてくるにつれて、キャリアアップのための転職や、社内での昇進・職務内容の変更などを検討される方もいらっしゃるかと思います。その際、現在お持ちの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が、変更後の職務内容にも適用されるのか、どのような手続きが必要になるのかといった疑問が生じるかもしれません。

この記事では、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格のうち、特に技術分野のお仕事に焦点を当て、どのような職務内容が該当するのか、キャリアの変更やステップアップに伴ってどのような点に注意が必要となるのか、そして必要な手続きについて詳しく解説します。

「技術・人文知識・国際業務」ビザの基本要件(技術分野)

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、自然科学、人文科学の分野における専門的な知識や技術、または外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づいた業務に従事するために許可されるものです。技術分野に関しては、主に大学等で理学、工学、その他の自然科学分野を専攻し、その知識や技術を要する業務に従事する場合に該当します。

職務内容の適格性

技術分野における「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で認められる職務は、従事しようとする業務に必要な技術・知識に係る科目を専攻して大学等を卒業していること、または一定期間の実務経験があることが基本要件となります。重要なのは、学歴や職務経験と、実際に日本で行う業務内容との間に、専門的な関連性があることです。

例えば、情報工学を専攻して大学を卒業した方が、ソフトウェア開発エンジニアとして働く場合、これは関連性が高いと判断されやすいでしょう。しかし、全く異なる分野(例えば、経営学専攻の方がプログラマーとして働く場合など)では、大学での専攻だけでは関連性が認められにくく、別途、関連分野での実務経験が必要となるケースがあります。

求められる業務水準

単に大学等を卒業しているだけではなく、その専門知識・技術を用いて行う業務が、一般的に大学等で学ぶ水準と同等か、それ以上の専門性が求められる業務であることが期待されます。例えば、単純な事務作業や、特別な専門知識を要しないルーチンワークは、原則としてこの在留資格の活動内容とは認められません。

職務内容の適格性を証明するために

在留資格の申請(新規、変更、更新)にあたっては、申請者の学歴・職歴と従事する業務内容の関連性、および業務の専門性を証明するための書類を提出する必要があります。

これらの書類を通じて、入国管理局は申請者が従事しようとする業務が「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当するかどうかを判断します。

キャリア変更が在留資格に与える影響

日本でのキャリアを積む中で、転職、社内での部署移動、昇進による職務内容の変化などが生じることがあります。これらの変化が、現在お持ちの在留資格で認められている活動範囲を超える場合、注意が必要です。

転職の場合

最も注意が必要なのは、転職によって職務内容が大きく変わる場合です。新しい会社での仕事が、これまでの学歴や職務経験から見て、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で認められる専門性のある技術分野の業務に該当しないと判断される可能性があります。

例えば、ITエンジニアから、全く異なる分野(例:営業職、翻訳職、レストラン経営など)へ転職する場合、原則として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では継続できません。この場合は、新しい職務内容に対応する別の在留資格への変更が必要となります。

同じITエンジニア職であっても、担当する技術分野が大きく変わる場合や、より下流工程の業務(例:単純なテスター業務など、専門性があまり求められないとされる業務)になる場合は、慎重な判断が必要です。

社内での職務内容変更・昇進の場合

同じ会社で働く場合でも、部署異動や昇進によって職務内容が大きく変わることがあります。管理職に昇進し、技術的な業務よりもマネジメント業務が中心になる場合などです。

業務内容の変更が、現在の在留資格で認められる活動範囲内であれば問題ありません。しかし、変更後の業務が、当初許可された在留資格の活動内容から大きく逸脱し、その専門性を要しないと判断される場合は、在留資格の変更が必要になる可能性があります。

また、転職の場合と同様に、職務内容が大きく変わる場合は、後述する「就労資格証明書交付申請」を行っておくことが推奨されます。

職務内容変更に伴う手続き

転職や社内での職務内容変更があった場合、必ずしも全てのケースで在留資格の変更が必要となるわけではありません。しかし、後々の在留期間更新許可申請で問題なく許可を得るためにも、適切な手続きや対応を知っておくことが重要です。

就労資格証明書交付申請(任意)

転職などで所属機関(会社)が変更になった場合、速やかに(原則として14日以内に)新しい所属機関について入国管理局に届け出る義務があります。これはオンラインまたは窓口で行えます。

加えて、新しい会社での業務内容が、引き続き現在の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」)の活動に該当することを、入国管理局にあらかじめ確認してもらう手続きとして、「就労資格証明書交付申請」があります。これは必須の手続きではありませんが、この証明書を取得しておくと、次回の在留期間更新許可申請の際に、新しい会社での業務が在留資格に適合していることの証明となり、更新がスムーズに進む可能性が高まります。特に、転職によって業務内容が以前と多少異なる場合や、会社の事業内容が以前の会社と異なる場合は、この申請を行うことを強くお勧めします。

在留資格変更許可申請(必須の場合あり)

転職や職務内容変更によって、従事する業務が現在の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で認められる活動範囲から完全に逸脱する場合(例:前述のように、専門技術職から全く異なる職種に変わる場合など)、その新しい職務内容に対応する別の在留資格への変更許可申請が必須となります。

この申請は、新しい業務を開始する前に行うことが望ましいとされています。許可を得ずに異なる種類の活動を続けた場合、次回の在留期間更新許可申請が不許可となるだけでなく、不法就労とみなされるリスクもあります。

在留期間更新許可申請における職務内容の確認

在留期間更新許可申請の審査では、これまでの在留期間中の活動内容が、許可された在留資格の活動範囲に適合していたかどうかが確認されます。

転職や職務内容の変更があった場合、新しい会社での業務内容や、変更後の職務内容が「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当するかどうかが改めて審査されます。この際、就労資格証明書を取得していれば、その審査は比較的簡略化される傾向にあります。証明書がない場合でも、新しい会社の事業内容、雇用契約書、従事している業務内容の詳細などを改めて提出し、現在の在留資格での活動を継続していることを説明する必要があります。

特に注意が必要なケース

専門家への相談

ご自身のキャリア変更が、現在の在留資格にどのような影響を与えるのか判断が難しい場合や、必要な手続きについて不安がある場合は、専門家である行政書士や弁護士に相談することをお勧めします。

特に、

などは、個別の状況に応じた専門的なアドバイスが不可欠です。専門家は、提出書類の準備や入国管理局とのやり取りをサポートしてくれます。

信頼できる専門家を探す際は、インターネット検索だけでなく、ご紹介や、各行政書士会・弁護士会の情報を参考にすると良いでしょう。

まとめ

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ技術職として、日本でキャリアを継続・発展させていくためには、ご自身の職務内容が在留資格の要件に適合しているかを常に意識することが重要です。転職や社内での職務内容変更があった場合は、その変化が在留資格に影響するかどうかを確認し、必要に応じて就労資格証明書交付申請や在留資格変更許可申請などの手続きを適切に行うことが、安定して日本で働き続けるための鍵となります。

ご自身の状況に合わせて、適切な判断と手続きを行うためには、最新の情報収集と、状況に応じた専門家への相談が非常に有効です。この記事が、皆様の日本でのより良いキャリア形成の一助となれば幸いです。

より詳細な情報や最新の正確な手続きについては、必ず日本の出入国在留管理庁の公式サイトや、信頼できる専門家にご確認ください。