キャリアアップのための日本での再学習:大学院等入学に伴う在留資格変更・取得手続きガイド
日本での生活やキャリアをさらに充実させるために、大学院や専門学校などで専門知識やスキルを深めたいとお考えの外国籍の方もいらっしゃるでしょう。現在、お仕事などの在留資格(「技術・人文知識・国際業務」など)で日本に滞在している方が、日本の教育機関に入学して学ぶためには、原則として在留資格を「留学」へ変更する必要があります。
この手続きは、現在の在留資格の種類や状況、そして入学する教育機関の種類によって、準備や注意すべき点が異なります。ここでは、日本国内に滞在している方が、教育機関への入学に伴い在留資格を「留学」へ変更または取得するための手続きについて、詳細にご説明します。
在留資格「留学」とは
在留資格「留学」は、日本の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校、各種学校などの教育機関で学ぶことを目的とする外国籍の方に付与される在留資格です。この在留資格で認められる活動は、教育機関において教育を受けることです。
活動期間は、教育機関の種類や課程によりますが、通常は6ヶ月、1年、1年3ヶ月、2年、2年3ヶ月、3年、3年3ヶ月、4年など、卒業や課程修了に必要な期間に応じて決定されます。
現在日本に滞在している方の在留資格変更許可申請
現在、就労資格(例:「技術・人文知識・国際業務」)や家族滞在などの在留資格を持って日本に滞在している方が、教育機関への入学を機に留学の目的で日本に滞在し続けるためには、在留資格を「留学」に変更する許可を、お近くの地方出入国在留管理官署(以下、入管)に申請する必要があります。
申請の条件
在留資格変更許可申請が認められるためには、主に以下の条件を満たす必要があります。
- 入学許可: 入学を希望する日本の教育機関から、正式な入学許可を受けていること。
- 在留資格「留学」の上陸許可基準への適合: 法務省が定める在留資格「留学」に関する基準を満たしていること。これには、就学を希望する機関が、その課程の修了によって学士以上の学位取得や専門士等の称号取得が可能であることなどが含まれます。(各種学校の場合は別途基準があります。)
- 経費支弁能力: 日本での留学生活(学費、生活費など)に必要となる一切の経費を支弁する十分な資産や収入があることを証明できること。申請者本人、または申請者の経費支弁者が行う必要があります。
- 素行の善良性: 日本の法律を遵守し、過去に問題となるような行動がないこと。
- 申請理由の合理性: なぜ現在の在留資格から留学資格への変更が必要なのか、その理由が合理的であること。キャリアアップのためのスキル習得や、特定の研究分野を深めるためなど、具体的な目的を明確に説明できることが重要です。
申請手続きの流れ
- 必要書類の準備: 後述の必要書類リストを参考に、書類を準備します。教育機関から入学許可書や入学に関する証明書を発行してもらう必要があります。経費支弁能力を証明するための書類準備が特に重要です。
- 入管への申請: 準備した書類一式を持って、居住地を管轄する地方出入国在留管理官署に出頭し、在留資格変更許可申請を行います。オンライン申請が可能な場合もあります。
- 審査: 入管による審査が行われます。審査期間は通常2週間~2ヶ月程度ですが、申請内容や時期によって変動することがあります。追加書類の提出を求められることもあります。
- 結果通知: 審査結果は、通常、郵送で通知されます。許可された場合は、新しい在留カードを受け取るために再度入管に出頭します。不許可の場合は、その理由が通知されます。
必要書類(一般的な例)
提出書類は、申請者の国籍、現在の在留資格、入学する教育機関の種類などによって異なります。以下は一般的な例であり、事前に必ず法務省のウェブサイトや教育機関、または管轄の入管で最新かつ正確な情報を確認してください。
- 在留資格変更許可申請書: 入管のウェブサイトからダウンロードできます。
- 証明写真: 指定されたサイズ、様式のもの。
- パスポート: 提示のみの場合と、コピーの提出が必要な場合があります。
- 在留カード: 提示し、両面のコピーを提出します。
- 入学許可書の写し: 入学する教育機関が発行したもの。
- 教育機関に関する資料: 教育機関が発行する概要書や入学案内、授業内容、学費に関する資料など。教育機関によっては、申請に必要な書類一式を準備してくれる場合があります。
- 最終学歴の卒業証明書または卒業見込証明書:
- 日本語能力を証明する書類: 日本語能力試験(JLPT)の合格証、EJUの成績証明書など。教育機関によっては、特定のレベルが求められます。
- 経費支弁能力を証明する書類:
- 申請者本人または経費支弁者名義の預貯金残高証明書
- 所得証明書、納税証明書
- 奨学金支給証明書
- その他、経費支弁の根拠となる書類
- 申請理由書: なぜ在留資格を変更して留学するのか、その目的や計画を具体的に記載します。キャリアアップへの意欲、将来の展望などを盛り込むと良いでしょう。
- その他: 申請内容に応じて、追加書類(戸籍謄本、住民票、婚姻証明書、在職証明書、退職証明書など)が必要となる場合があります。
申請上の注意点
- 申請時期: 現在の在留期間満了日までに申請を行う必要があります。余裕を持って、入学の2ヶ月前など、早めに準備を開始することをおすすめします。
- 経費支弁の証明: 留学期間中の学費と生活費を賄える十分な資金があることを明確に示す必要があります。預貯金残高証明書だけでなく、その資金の形成過程を説明できる資料(給与明細、送金証明など)の提出を求められることもあります。
- 申請理由の明確化: なぜ現在の仕事などを辞めてまで留学が必要なのか、その理由を説得力を持って説明することが重要です。単なる興味ではなく、具体的なキャリア目標やスキル習得の必要性と結びつけて記述しましょう。
- 在留期間満了日を過ぎた場合: 在留期間満了日までに変更申請が行われ、その期間が過ぎても、結果が出るまでは引き続き日本に滞在できます(特例期間)。ただし、この間は原則として就労などの活動はできません。
- 不許可のリスク: 申請内容に不備があったり、条件を満たしていないと判断されたりした場合、不許可となる可能性があります。不許可となった場合、速やかに帰国するか、認められる他の在留資格への変更を再申請する必要がありますが、状況は難しくなることが多いです。
留学中の活動と卒業後の進路
- 資格外活動許可: 留学ビザでは原則として働くことはできませんが、資格外活動許可を得ることで、定められた範囲内(原則として週28時間以内など)でアルバイトを行うことが可能です。生活費を補う目的などでアルバイトを検討する場合は、別途申請が必要となります。
- 卒業後の進路: 留学を終えて日本での就職を希望する場合、就労可能な在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」)への変更許可申請を行う必要があります。留学中に就職活動を行い、内定を得てから手続きを進めることになります。
専門家への相談
在留資格変更許可申請の手続きは複雑であり、特に経費支弁の証明や申請理由書の作成には専門的な知識が必要となる場合があります。申請に不安がある場合や、個別の状況が複雑な場合は、出入国在留管理行政に関する専門家である行政書士に相談することをおすすめします。多くの教育機関には留学生向けの窓口があり、在留資格に関する情報提供や申請サポートを行っている場合もありますので、そちらに相談してみるのも良いでしょう。
まとめ
日本でキャリアアップやスキルアップを目指し、教育機関への進学を検討することは素晴らしい一歩です。しかし、それに伴う在留資格の手続きは、事前の準備と正確な理解が不可欠です。この記事が、皆様の留学計画と在留資格変更・取得手続きの一助となれば幸いです。ご自身の状況に合わせて、必要な情報を確認し、計画的に手続きを進めてください。より詳細な情報や個別のケースについては、必ず関係省庁のウェブサイトや専門家にご確認ください。