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永住許可申請が不許可になった場合:その後の手続きと対応策

Tags: 永住許可, 在留資格, 不許可, 再申請, 行政不服審査, 専門家

はじめに

日本での生活が長くなり、キャリアや家族構成の変化を機に永住許可の取得を検討される方は多くいらっしゃいます。永住許可は、日本での活動に制限が少なくなり、生活の安定をもたらす魅力的なものですが、申請が必ずしも許可されるとは限りません。残念ながら、申請が不許可となるケースも存在します。

しかし、永住許可申請が不許可になったとしても、そこで終わりではありません。不許可となった理由を把握し、適切な対応をとることで、再び永住許可を目指す道は開かれています。この記事では、永住許可申請が不許可になった場合の、その後の手続きや考えられる対応策について詳しく解説します。

不許可通知を受け取ったらまず確認すること

永住許可申請が不許可となった場合、原則として「永住許可申請不許可通知書」という書類が郵送されます。この通知書には、申請が不許可となった理由が具体的に記載されています。

最も重要なのは、この不許可理由を正確に理解することです。理由が不明確な場合や、記載されている内容に納得がいかない場合は、通知書に記載されている窓口(一般的には申請を行った地方出入国在留管理局)に問い合わせて、詳細な説明を求めることができます。不許可理由を正しく把握することが、その後の対応策を検討する上での出発点となります。

不許可理由としてよくあるものには、以下のような例が挙げられます。

不許可理由は一つだけとは限らず、複数の理由が組み合わさっていることもあります。

不許可になった場合の主な対応策

不許可理由を把握したら、その後の対応を検討します。主な対応策としては、以下の3つが考えられます。

  1. 不許可理由を解消した上での再申請
  2. 異議申し立て(行政不服審査請求)
  3. 訴訟(行政事件訴訟)

それぞれの対応策について詳しく見ていきましょう。

1. 不許可理由を解消した上での再申請

最も一般的な対応策は、不許可となった理由を真摯に受け止め、その問題を解消・改善した上で、改めて永住許可を再申請することです。

再申請のメリット:

再申請の手順と注意点:

  1. 不許可理由の分析と改善: 不許可通知書の内容に基づき、何が問題だったのかを詳細に分析します。収入不足なら収入を増やす努力をする、納税や社会保険の未納があれば完納し証明書類を揃える、過去の違反行為があればその後の生活態度で改善を示すなど、具体的な対策を講じます。
  2. 準備期間: 不許可理由を解消・改善するためには、一定の期間が必要な場合があります。例えば、収入を増やすためには数ヶ月から数年の実績が必要になることもあります。焦らず、確実に改善を図ることが重要です。
  3. 必要書類の見直しと追加: 初回申請時と同じ書類だけでなく、不許可理由を解消したことを証明するための書類を追加で提出する必要があります。例えば、未納だった税金や社会保険料を納付したことを証明する書類、収入が増加したことを示す給与明細や課税証明書などです。
  4. 再申請のタイミング: 不許可理由が解消され、永住許可の要件を満たす見込みが立った時点で行います。不許可から期間が空いていても問題ありませんが、状況の改善が見られないまま短期間で再申請しても、再び不許可となる可能性が高いです。
  5. 申請先の確認: 原則として、初回申請時と同じ地方出入国在留管理局に再申請します。

再申請を検討する際は、不許可理由が改善可能であるか、改善にどのくらいの期間が必要かを見極めることが重要です。

2. 異議申し立て(行政不服審査請求)

不許可理由に納得がいかない場合や、入管当局の判断が法令や事実に反していると思われる場合は、「異議申し立て(行政不服審査請求)」を行うことができます。これは、入管当局の上級庁(法務大臣)に対して、処分(不許可決定)が不当であるとして再審査を求める手続きです。

異議申し立てのメリット:

異議申し立ての手順と注意点:

  1. 申し立て期間: 不許可通知書を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に、不許可決定を行った地方出入国在留管理局を経由して、法務大臣に対して行います。期間を過ぎると原則として受け付けてもらえません。
  2. 申し立て方法: 異議申立書を作成し、不許可決定の取消しを求める理由を具体的に記載します。なぜ不許可理由が誤っているのか、自分の主張を裏付ける証拠書類などを添付して提出します。
  3. 審査: 法務大臣(実際には法務省の担当部署)が申し立て内容と証拠書類を審査します。場合によっては、追加の資料提出や面談を求められることもあります。
  4. 結果: 審査の結果、不許可決定が妥当であると判断されるか、あるいは不許可決定を取り消して再審査(あるいは許可)とするかの裁決が下されます。裁決は文書で通知されます。
  5. 難易度: 異議申し立ては、入管当局の判断の誤りを指摘する必要があり、専門的な知識と説得力のある主張が求められます。個人的に行うにはハードルが高く、行政書士や弁護士といった専門家に相談・依頼することが強く推奨されます。

異議申し立ては、不許可理由が明確でなく、入管の判断に疑問がある場合に有効な手段ですが、必ずしも良い結果が得られるとは限りません。

3. 訴訟(行政事件訴訟)

異議申し立ての裁決にも納得がいかない場合や、不許可決定が法的に見て違法であると考える場合は、最終手段として「訴訟(行政事件訴訟)」を提起することができます。これは、裁判所に対して不許可決定の取消しを求める手続きです。

訴訟のメリット:

訴訟の手順と注意点:

  1. 提起期間: 異議申し立ての裁決の通知を受けた日の翌日から6ヶ月以内に、日本の裁判所に提起します。異議申し立てを行わずに、不許可通知書の送達を受けた日の翌日から6ヶ月以内に直接訴訟を提起することも可能です(ただし、原則として異議申し立てを経てからの方が望ましいとされています)。
  2. 手続き: 訴状を作成し、不許可決定が違法である理由を記載します。証拠書類を提出し、裁判所で審理が行われます。
  3. 難易度と費用: 訴訟は法的な専門知識が不可欠であり、手続きも複雑です。原則として弁護士に依頼する必要があり、費用も高額になる傾向があります。
  4. 結果: 裁判所が不許可決定の適法性を判断し、判決を下します。不許可決定が違法であると判断された場合は、決定が取り消され、入管当局は改めて審査を行うことになります。

訴訟は最も強力な手段ですが、時間、費用、専門知識の全てにおいてハードルが非常に高い手続きです。慎重な検討と専門家との十分な相談が必要です。

専門家(行政書士・弁護士)への相談

永住許可申請が不許可となった場合、不許可理由の正確な把握、再申請に向けた改善策の検討、異議申し立てや訴訟の可能性の判断など、専門的な知識が不可欠となる場面が多くあります。

このような状況では、出入国在留管理業務や行政事件訴訟を専門とする行政書士や弁護士といった専門家に相談することが非常に有効です。

専門家に相談・依頼するメリット:

専門家選びのポイント:

専門家への相談は有料となりますが、複雑な状況を打開し、永住許可という目標を達成するためには、費用対効果の高い投資となる場合が多いです。

まとめ

永住許可申請が不許可になったことは、ショックかもしれません。しかし、不許可理由を正しく理解し、適切な対応をとることで、再び永住許可を目指すことは十分に可能です。

最も現実的で効果的な対応策は、不許可理由を解消・改善した上で再申請を行うことです。不許可理由に疑問がある場合は、異議申し立てや訴訟といった法的な手段も存在しますが、これらはより高度な専門知識と手続きが必要となります。

どのような対応をとるにしても、まずは不許可通知書の内容をしっかりと確認し、必要であれば入管に説明を求めることから始めましょう。そして、ご自身の状況と不許可理由を踏まえ、専門家である行政書士や弁護士に相談することをお勧めします。彼らのサポートを得ることで、複雑な手続きを乗り越え、永住許可への道を再び開くことができるでしょう。

諦めずに、正しい情報を得て、適切なステップを踏むことが大切です。