日本で専門職として働く方のための在留資格更新・変更ガイド:キャリア変化に伴う手続きと注意点
日本で数年間の生活を経て、キャリアアップを目指す方も多いでしょう。転職だけでなく、同じ会社内で昇進したり、担当する職務内容が変わったりすることも、キャリアの自然な流れです。しかし、外国籍の方が日本で働くためには、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格が必要です。これらのキャリアの変化が、お持ちの在留資格に影響を与える可能性があることをご存知でしょうか。
この記事では、日本で専門職として働く方が、転職を伴わないキャリアの変化(昇進、職務変更、勤務条件の変更など)に際して知っておくべき在留資格の更新・変更手続きと、その際の注意点について詳しく解説します。
「技術・人文知識・国際業務」ビザの基本のおさらい
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、日本の公私の機関との契約に基づいて行う活動のうち、自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事する場合に認められます。具体的には、エンジニア、通訳・翻訳、デザイナー、マーケティング担当者などが含まれます。
この在留資格は、許可された「活動内容」に基づいて与えられています。そのため、当初許可された活動内容から大きく変化する場合、在留資格の変更が必要になることがあります。また、定期的な在留期間の満了前に、在留資格の更新許可申請を行う必要があります。
在留資格の更新許可申請について
現在お持ちの在留資格の期間が満了する前に、日本での滞在を継続したい場合に必要となる手続きです。通常、在留期間満了日の3ヶ月前から申請が可能です。
申請のタイミング
在留期間満了日の3ヶ月前から、遅くとも満了日までに申請する必要があります。ただし、申請期間の終盤は窓口が混雑することが予想されるため、余裕を持った申請をお勧めします。
審査のポイント
更新申請の主な審査ポイントは以下の通りです。
- 引き続き日本で行う活動が、現在お持ちの在留資格に該当すること: これが最も重要です。現在の職務内容が、当初在留資格を取得した際の活動内容と異なっていないか確認されます。
- 在留状況が良好であること: 法令遵守状況(交通違反、税金・社会保険の納付状況など)や、居住地に関する届出義務の履行状況などが審査されます。
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること: 安定した収入があるかなどが確認されます。
- 納税義務・公的義務を履行していること: 所得税、住民税、健康保険料、年金保険料などを適切に納付しているか確認されます。
キャリア変化が更新申請に与える影響
所属する会社は同じでも、昇進して管理職になった、担当部署が変わり職務内容が以前と大きく異なる、といったキャリアの変化があった場合、その新しい職務内容が「技術・人文知識・国際業務」の活動範囲に含まれるかどうかが審査で重要になります。
例えば、エンジニアからマネージャーに昇進し、技術的な業務からチーム管理や営業活動が主になった場合など、実質的な活動内容が変化していると判断される可能性があります。この場合、職務内容の詳細を説明する書類(職務内容説明書など)を提出し、引き続き在留資格の活動に該当することを説明する必要があります。
在留資格の変更許可申請について
所属する会社は同じでも、現在の在留資格で許可されている活動内容と全く異なる活動を行うことになった場合は、在留資格の変更許可申請が必要になることがあります。
申請のタイミング
変更後の活動を開始する前に申請することが原則ですが、まずは入国管理局(現在の出入国在留管理庁)または専門家(行政書士など)に相談することをお勧めします。
審査のポイント
変更申請の審査では、主に以下の点が確認されます。
- 変更後の活動が、新しく申請する在留資格の要件を満たしていること: 例えば、「技術・人文知識・国際業務」から別の在留資格(例:経営・管理など)に変更する場合、その新しい在留資格の条件(事業の適法性、事業所の確保、投資金額など)を満たす必要があります。
- 申請人の経歴(学歴、職歴)が、変更後の活動内容に適合していること: 従事しようとする業務に必要な専門性や経験があるかが問われます。
キャリア変化が変更申請に与える影響
同じ会社内で、例えば「技術・人文知識・国際業務」の活動内容と認められていた業務から、会社の経営企画や法務など、活動内容の分類が異なる可能性のある業務に担当が変わった場合などが該当する可能性があります。この場合、現在の在留資格を「技術・人文知識・国際業務」のまま更新できるか、それとも別の在留資格への変更が必要かを行政書士や出入国在留管理庁に確認することが重要です。
キャリア変化に伴う在留資格手続きの注意点
キャリアの変化が在留資格に影響を与える可能性がある場合に、特に注意すべき点です。
- 職務内容の確認と記録: 昇進や職務変更があった際には、新しい職務内容が具体的にどのようなものであるか、会社から提供される職務内容説明書や雇用契約書などをしっかりと確認し、保管しておくことが重要です。更新・変更申請時に提出を求められる場合があります。
- 会社との連携: 会社の人事担当者や直属の上司に対し、ご自身の在留資格の状況(更新時期など)や、キャリア変化が在留資格に影響を与える可能性があることを事前に共有し、必要な手続き(会社側が用意する書類の準備など)への協力を求めることが大切です。
- 申請時期の厳守: 更新申請は在留期間満了日までに、変更申請は原則として活動変更前に行う必要があります。期限を過ぎると不法滞在となるリスクがありますので、早めに準備を進めましょう。
- 必要書類の準備: 申請には、申請書、写真、パスポート、在留カードに加え、会社が作成する書類(在職証明書、活動内容に関する説明書、会社の登記事項証明書、決算書類など)が必要です。これらの書類は会社規模や状況によって異なりますので、最新の情報を出入国在留管理庁のウェブサイトで確認するか、会社の人事担当者と緊密に連携して準備を進めてください。
- 不許可リスクの理解と対策: 申請内容や提出書類に不備があったり、職務内容が在留資格の活動に適合しないと判断されたりした場合、申請が不許可になることがあります。不許可になると、日本での滞在や就労に大きな影響が出ます。リスクを最小限にするためには、申請前に提出書類を十分に確認し、疑問点があれば専門家や出入国在留管理庁に相談することが重要です。職務内容が変更になる場合は、その内容が在留資格の要件を満たしていることを、会社側と協力してしっかりと証明できる資料を準備する必要があります。
専門家への相談を検討するケース
以下のようなケースでは、行政書士など在留資格手続きの専門家への相談を強くお勧めします。
- キャリアの変化(昇進、職務変更など)により、現在の職務内容が在留資格の活動範囲に含まれるか不安がある場合。
- 在留資格変更が必要かどうかの判断が難しい場合。
- 申請書類の準備に不安がある、または会社側の協力が十分に得られない場合。
- 過去に在留資格に関する問題(不許可、違反など)があった場合。
- 永住許可申請など、他の複雑な手続きも同時に検討している場合。
専門家は、個別の状況に応じて必要な手続きや準備すべき書類について正確なアドバイスを提供し、円滑な手続きをサポートしてくれます。
関連情報
- 出入国在留管理庁ウェブサイト:在留資格の更新・変更に関する最新の情報、申請様式、必要書類リストなどが掲載されています。ご自身の状況に合った情報を必ずご確認ください。(例:https://www.moj.go.jp/isa/ )
- 所属機関に関する届出:転職だけでなく、所属機関の名称や所在地が変更になった場合など、届出が必要なケースがあります。詳細は出入国在留管理庁のウェブサイトをご確認ください。
まとめ
日本で専門職としてキャリアを積む上で、在留資格の更新・変更手続きは避けて通れないものです。特に、転職を伴わない社内でのキャリア変化であっても、その内容が在留資格に影響を与える可能性があります。ご自身の職務内容と在留資格の関係を理解し、必要な手続きを遅滞なく行うことが、日本での安定したキャリア継続のために非常に重要です。
不安な点や不明な点があれば、早めに出入国在留管理庁や在留資格手続きを専門とする行政書士に相談し、適切な対応を取るようにしましょう。この記事が、皆様の日本でのキャリア発展の一助となれば幸いです。