日本への家族呼び寄せ:配偶者・子供の在留資格申請手続きと注意点
はじめに
日本での生活が安定し、キャリアを築かれる中で、遠く離れたご家族、特に配偶者やお子様を日本に呼び寄せて一緒に暮らしたいとお考えになる方は多くいらっしゃいます。しかし、家族を日本に呼び寄せるためには、入管法に基づいた適切な在留資格の申請手続きが必要です。
この手続きは、招へいする方(日本にいる申請者ご本人)の在留資格の種類や、呼び寄せるご家族との関係性によって、申請するべき在留資格や必要となる書類が異なります。また、手続きには時間と手間がかかる場合があり、正確な情報を基に進めることが重要です。
この記事では、日本で生活する外国籍の方が、配偶者やお子様を日本に呼び寄せる際に必要となる在留資格の申請手続きについて、主な在留資格の種類、具体的な申請の流れ、必要書類、そして手続きを進める上での注意点などを詳しく解説します。
日本への家族呼び寄せに必要な主な在留資格
家族を日本に呼び寄せる場合、呼び寄せられる方が取得すべき主な在留資格は、日本にいるご本人の在留資格や、呼び寄せる方との関係によって異なります。代表的な在留資格は以下の通りです。
1. 家族滞在(Dependent)
「家族滞在」の在留資格は、就労資格(例:「技術・人文知識・国際業務」、「技能」など)、留学、文化活動、研究などの在留資格を持って日本に滞在している外国人の扶養を受ける配偶者および子供が取得できるものです。
- 対象者: 日本に滞在する外国人の配偶者(婚姻関係にある者)および子供(実子、養子)。
- 活動内容: 日本に滞在する扶養者の扶養を受けて日常生活を営む活動。原則として就労は認められていませんが、「資格外活動許可」を取得すれば週28時間以内のアルバイトなどが可能です。
- 注意点: 扶養を受けて生活できる経済的な基盤が必要です。招へいする側の在留資格や滞在期間なども考慮されます。
2. 日本人の配偶者等(Spouse or Child of Japanese National)
日本人の配偶者、日本人の子、または日本人の特別養子に該当する方が取得できる在留資格です。
- 対象者: 日本人の配偶者(法律上の婚姻関係にある者)、日本人の実子または特別養子。
- 活動内容: 原則として活動に制限はありません。就労も可能です。
- 注意点: 婚姻や親子関係が真実であること(偽装でないこと)が厳しく審査されます。安定した結婚生活や生計能力を示す必要があります。
3. 永住者の配偶者等(Spouse or Child of Permanent Resident)
永住許可を得て日本に滞在する外国人の配偶者、または永住者の実子に該当する方が取得できる在留資格です。
- 対象者: 永住者の配偶者(法律上の婚姻関係にある者)、永住者の実子。
- 活動内容: 原則として活動に制限はありません。就労も可能です。
- 注意点: 「日本人の配偶者等」と同様に、婚姻や親子関係の真実性、生計能力などが審査されます。
これらの他、「定住者」の在留資格が、特定の身分・地位に基づいて日本に居住する外国人(例:日系二世、三世など)の配偶者や子に認められる場合もあります。
在留資格認定証明書交付申請の流れ
海外にいるご家族を日本に呼び寄せる場合、一般的にはまず、日本にいる招へい者(ご本人)が日本の出入国在留管理庁に対して「在留資格認定証明書交付申請」を行います。この証明書は、呼び寄せられる方が日本で行う活動が上陸条件に適合していることを事前に証明するものです。
申請の主な流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備: 申請に必要な書類を収集・作成します。これは最も重要かつ時間のかかるステップです。
- 申請: 招へい者(または代理人)が、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請書類を提出します。
- 審査: 出入国在留管理庁で提出された書類に基づき審査が行われます。審査期間は申請内容や混雑状況によって異なりますが、通常1ヶ月〜3ヶ月程度です。
- 結果通知: 審査の結果、許可された場合は「在留資格認定証明書」が交付されます。不許可の場合はその旨通知されます。
在留資格認定証明書交付申請の必要書類
申請する在留資格によって詳細は異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。ここでは「家族滞在」を例に、主要な書類を挙げます。
1. 申請人(日本に呼び寄せられる家族)に関する書類
- 在留資格認定証明書交付申請書: 出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロードできます。
- 写真(1枚): 縦4cm×横3cm。申請前3ヶ月以内に撮影されたもの。
- パスポートの写し: 身分事項のページ。
- 家族関係を証明する書類:
- 配偶者の場合: 婚姻証明書、結婚証明書など、申請人と日本にいる扶養者との婚姻関係を証明するもの。本国で発行された公的な書類が必要です。
- 子供の場合: 出生証明書、親子関係公証書など、申請人と日本にいる扶養者との親子関係を証明するもの。本国で発行された公的な書類が必要です。
- 日本で発行された書類(戸籍謄本など)が使用できる場合もありますが、外国人同士の婚姻・出生の場合は原則として本国の公的書類が必要です。
- その他: 申請理由書(任意提出ですが、招へいの必要性や家族関係の状況などを説明するために有効です)。
2. 招へい者(日本にいる申請者ご本人)に関する書類
- 在留カードまたは特別永住者証明書の写し: 両面の写し。
- パスポートの写し: 身分事項のページ。
- 職業を証明する書類: 在職証明書など。
- 所得・収入を証明する書類:
- 住民税の課税(または非課税)証明書および納税証明書(1年間の総所得および納税状況が記載されたもの)。市区町村役場で取得できます。最新年度のものが必要です。
- 確定申告書の控えの写し(税務署の受付印があるもの)。
- 給与所得の源泉徴収票。
- これらの書類で十分な生計維持能力が証明できない場合、預金残高証明書などが追加で必要となることがあります。
- 住民票: 世帯全員の記載があるもの。市区町村役場で取得できます。
- その他: 招へい理由書(招へいの経緯や家族構成などを具体的に記述)。身元保証書(招へい者が身元保証人となる場合)。
3. 身元保証に関する書類
招へい者が身元保証人となる場合、招へい者の上記の所得証明書などが身元保証能力を証明する書類となります。身元保証書は出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロードできます。身元保証人は、滞在費、帰国旅費、法令遵守の支援について責任を負うことになります。
【重要】
- 上記は一般的な書類であり、申請する在留資格(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等など)や個別の状況によって必要書類は異なります。
- 提出書類が外国語で作成されている場合は、原則として日本語の翻訳文が必要です。翻訳者の氏名・捺印(または署名)が必要です。
- 提出された書類は原則として返却されません。必要な場合は事前にコピーを取っておいてください。
- 最新かつ正確な必要書類については、必ず出入国在留管理庁のウェブサイトを確認するか、管轄の出入国在留管理官署にお問い合わせください。
在留資格認定証明書交付後の手続き
在留資格認定証明書が無事交付されたら、以下の手続きを行います。
- 海外のご家族へ送付: 交付された在留資格認定証明書(原本)を、海外にいるご家族へ郵送します。
- 在外公館でのビザ申請: 海外のご家族が、お住まいの地域を管轄する日本の大使館または総領事館(在外公館)で、査証(ビザ)の申請を行います。この際、在留資格認定証明書とパスポート、その他必要書類を提出します。
- 査証(ビザ)の発給: 審査に問題がなければ、パスポートに査証(ビザ)が貼付されます。
- 来日: 査証が発給されたパスポートを持って日本へ入国します。入国審査時に在留資格認定証明書を提示します。
来日後の手続き
ご家族が日本へ入国したら、速やかに以下の手続きを行います。
- 転入届・住民登録: 入国後14日以内に、お住まいの市区町村役場で転入届を提出し、住民登録を行います。在留カードが交付されている場合は持参します。
- 在留カードの受け取り: 成田、羽田、関西、中部、新千歳、広島、福岡空港などの主要空港から入国した場合、原則として空港で在留カードが交付されます。それ以外の空港から入国した場合、後日、住所地を管轄する地方出入国在留管理官署から郵送されるか、または市区町村での転入届後に発行されます。
- 健康保険・年金の手続き: 住民登録後、国民健康保険や国民年金への加入手続きを行います。勤務先の健康保険組合などの被扶養者となる場合は、勤務先を通じて手続きを行います。
手続きを進める上での注意点
- 必要書類の収集・作成: 本国から取り寄せる書類や、日本語への翻訳が必要な書類など、準備に時間がかかるものがあります。早めに着手することが重要です。
- 経済力の証明: 家族滞在の場合、扶養者(ご本人)に、呼び寄せる家族を含めた世帯全員が日本で生活していくための十分な経済力があるかどうかが重要な審査ポイントとなります。過去1年間の所得状況や納税状況が厳しく見られます。
- 家族関係の信憑性: 特に配偶者を呼び寄せる場合、婚姻の真実性(実際に夫婦としての実態があるか)が重要視されます。単なる形式的な婚姻ではなく、夫婦として共同生活を営み、相互に扶養し合っている実態を示す必要があります。
- 申請理由書の重要性: 必須書類ではない場合もありますが、招へい理由書や質問書、申請理由書などを通じて、家族関係の具体的な状況、なぜ今日本に呼び寄せるのか、今後の生活計画などを丁寧に説明することが、審査官に状況を理解してもらう上で有効です。
- 不許可のリスク: 提出書類に不備がある場合、情報が不足している場合、または審査の結果、上陸条件に適合しないと判断された場合、申請が不許可となることがあります。不許可となった場合でも、諦めずに理由を確認し、再度申請できる可能性もあります。
- 最新情報の確認: 法令や手続きは変更されることがあります。申請時には必ず出入国在留管理庁の公式サイトで最新の情報を確認してください。
複雑なケースやご不安な点がある場合
ご自身の状況が複雑である場合(例:再婚、連れ子、過去に日本の在留資格で問題があったなど)、必要書類の準備に不安がある場合、または一度不許可になってしまった場合などは、ご自身で手続きを進めるのが難しいことがあります。
このような場合は、出入国在留管理業務を専門とする行政書士や、法的な問題を含む場合は弁護士などの専門家に相談することを検討されることをお勧めします。専門家は、個別の状況に応じた的確なアドバイスや、書類作成、申請取次ぎなどのサポートを提供してくれます。
- 参考情報:
- 出入国在留管理庁: 在留資格に関する公式情報が入手できます。 https://www.moj.go.jp/isa/
- 日本行政書士会連合会: 行政書士を探す際に参考になります。 https://www.gyosei.or.jp/
- 日本弁護士連合会: 弁護士を探す際に参考になります。 https://www.nichibenren.or.jp/
まとめ
日本で生活されている方が、大切なご家族を呼び寄せて一緒に暮らすことは、日本での生活をより豊かにする素晴らしいことです。適切な在留資格の申請手続きは、円滑な来日を実現するために不可欠です。
申請手続きには様々な書類が必要となり、ご自身の状況によっては複雑になることもありますが、この記事でご紹介した情報や、必要に応じて専門家のサポートを活用することで、手続きを確実に進めることが可能です。
ご家族の来日を心待ちにされている皆様の手続きが、無事に進むことを願っております。
免責事項: 本記事の情報は一般的な手続きについて説明したものであり、個別の状況に対する法的なアドバイスを構成するものではありません。最新かつ詳細な情報、または個別の相談が必要な場合は、必ず関係機関の公式サイトを確認するか、専門家にご相談ください。