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日本で働く外国人向け:企業型DC加入者のためのiDeCo活用ガイドと注意点

Tags: 企業型DC, iDeCo, 確定拠出年金, 資産形成, 税制優遇, 年金

日本で働く外国籍の方々にとって、将来に向けた資産形成は重要な関心事の一つです。公的年金制度に加え、私的な年金制度である確定拠出年金(DC)を活用することで、税制優遇を受けながら効率的に資産を増やすことが可能です。

確定拠出年金には、企業が掛金を拠出する「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と、個人が掛金を拠出する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2種類があります。多くの企業では企業型DCが導入されていますが、「企業型DCに加入している場合でも、iDeCoに加入できるのか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、企業型DCに加入している外国籍の方が、iDeCoを併用するためのルール、具体的な手続き、そして知っておくべき注意点について詳しく解説します。ご自身の状況に合わせて、最適な資産形成方法を選択するための一助となれば幸いです。

企業型DCとiDeCoの基本的な仕組み

まずは、企業型DCとiDeCoの基本的な仕組みを簡単に確認します。

これらの制度で運用した資産は、原則として60歳以降にならないと受け取ることができません。また、拠出した掛金は所得控除の対象となる(企業型DCの事業主掛金は給与として扱われない、iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となる)ため、所得税や住民税の負担を軽減できる税制優遇措置があります。運用益も非課税で再投資されます。

企業型DC加入者がiDeCoに加入できる条件

以前は、企業型DCに加入している方は原則としてiDeCoに加入できませんでした。しかし、法改正により、2017年1月からは企業型DC加入者でもiDeCoに加入できるようになりました

ただし、すべての企業型DC加入者が無条件にiDeCoに加入できるわけではありません。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 企業型DCの規約でiDeCoへの同時加入が認められている場合
    • これは最も一般的なケースです。お勤め先の企業型DCの規約で、従業員がiDeCoに加入することが許可されている必要があります。まずは会社の担当部署(人事部など)に確認することをお勧めします。
  2. 企業型DCのマッチング拠出をしていない場合
    • お勤め先の企業型DCでマッチング拠出(加入者自身が掛金を上乗せして拠出すること)を利用している場合、iDeCoには加入できません。マッチング拠出を利用するか、iDeCoを利用するかのいずれか一方を選択する必要があります。
  3. 企業型DCの事業主掛金が月額5.5万円(他の企業年金がある場合は月額2.75万円)以下である場合
    • 企業型DCとiDeCoの掛金には、合計で上限額が定められています。お勤め先の企業型DCの事業主掛金がこの上限額を超えている場合、iDeCoには加入できません。ほとんどの場合、事業主掛金がこの上限額以下であるため、この条件でiDeCoに加入できないケースは少ないです。

これらの条件、特に「企業型DC規約での許可」と「マッチング拠出の利用状況」が、企業型DC加入者がiDeCoに加入できるかどうかの重要なポイントとなります。

iDeCoの掛金上限額について

企業型DCとiDeCoを併用する場合、iDeCoに拠出できる掛金には上限があります。この上限額は、お勤め先の企業型DCの掛金額や、他の企業年金制度(確定給付企業年金など)に加入しているかどうかによって異なります。

ご自身の正確な掛金上限額を知るためには、お勤め先の企業型DCの掛金額を確認し、国民年金基金連合会のウェブサイトなどで詳細な計算方法をご確認ください。

iDeCo加入手続きのステップ

企業型DC加入者がiDeCoに加入する場合も、基本的な手続きの流れは通常のiDeCo加入手続きと同様です。

  1. iDeCoを取り扱う運営管理機関を選ぶ:
    • iDeCoは、証券会社、銀行、保険会社などの「運営管理機関」を通じて申し込みます。運営管理機関によって、手数料(口座管理手数料など)や選べる運用商品が異なります。ご自身の運用方針や希望する商品ラインナップ、手数料などを比較検討して選びましょう。
  2. 申込書類を入手・記入する:
    • 選んだ運営管理機関から申込書類一式を取り寄せます。
    • 申込書類には、ご自身の情報、加入区分(会社員の場合は第2号被保険者)、掛金の額などを記入します。
    • 企業型DC加入者の場合、お勤め先の企業に「事業主の証明書」を記入してもらう必要があります。 この証明書には、企業型DCの規約でiDeCoへの同時加入が認められているか、マッチング拠出の利用状況などが記載されます。この書類がないとiDeCoに申し込めません。
  3. 必要書類を提出する:
    • 記入済みの申込書類と、マイナンバー確認書類、本人確認書類などを運営管理機関に提出します。
  4. 国民年金基金連合会での審査:
    • 提出された書類は、国民年金基金連合会に送付され、iDeCoに加入できるかの資格審査が行われます。特に企業型DC加入者の場合は、「事業主の証明書」の内容に基づき、iDeCoへの加入条件を満たしているかが確認されます。
  5. 口座開設完了:
    • 審査が完了すると、iDeCoの口座が開設されます。加入者番号や今後の手続きに関する書類が送られてきます。掛金の引き落としも開始されます。
  6. 運用指図を行う:
    • 口座が開設されたら、掛金をどのような運用商品(投資信託など)で運用するかを自分で選択し、指図を行う必要があります。運用指図を行わないと、掛金は自動的に元本保証型商品などで運用される場合がありますので注意が必要です。

手続きには1ヶ月半から2ヶ月程度かかるのが一般的です。余裕を持って手続きを進めることをお勧めします。

企業型DCとiDeCoを併用する際の注意点

併用することで資産形成の選択肢が広がりますが、いくつかの注意点があります。

まとめ

企業型DCに加入している外国籍の方でも、一定の条件を満たせばiDeCoに加入し、両制度を併用することが可能です。これにより、さらに多くの掛金を税制優遇を受けながら積み立てることができ、将来に向けた資産形成を加速させることが期待できます。

しかし、併用には掛金の上限、マッチング拠出との関係、手続き、管理の手間、そして運用リスクなど、いくつかの注意点があります。ご自身の働き方や企業の制度、資産状況などを踏まえ、メリット・デメリットを十分に理解した上で、併用するかどうかを検討することが重要です。

企業型DCの規約や、ご自身の正確な掛金上限額、転職時の手続きなど、不明な点がある場合は、お勤め先の人事担当者、iDeCoの運営管理機関、または必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談いただくことをお勧めします。信頼できる情報源として、国民年金基金連合会(iDeCo公式サイト)や厚生労働省のウェブサイトも参照ください。

計画的な資産形成を通じて、日本での安心できる将来設計を進めていきましょう。